ROADSHOW 最終号

雑誌「ROADSHOW」は今月をもって最終号となった。

1972年の創刊以来36年(1月号になるため37年、か)。
私と同じ年の雑誌が今回をもって一つの役目を、終える。
9月の発表や様々な媒体にニュースとして記載されるようになり、発売後、書店でも品切れになっているところが多いようだ(私も手に入れたのは3軒目だ)。
今の出版業界は音楽業界と同じでなかなか厳しい。広告収入、という「雑誌」造る上でとても重要なファクターが減少してきているのに加え、インターネットや携帯という「いつでもどこでも」情報を手に入れられるツールが「氾濫」している。また週刊誌や漫画誌に至っては、戸板商売も氾濫している。コミックスも以前ほど売れなくなってきているようだ。CDが売れていない、という事と似ているのだろう。
「ROADSHOW」においては月刊誌だ。情報のスピードはネットや週刊誌には叶わない。ネットはすぐにでも記事を載せられる。また、広告宣伝費に関してもラジオや雑誌をWEBが凌駕している。であれば、クライアントとしても効率よくまた迅速になおかつ不特定多数に伝えられる媒体を重宝したがるのは、当然だともいえる。
とするなら、違うアプローチが必要だった。新聞がインターネットに対抗するために取るアプローチと同じように。
しかし、折しも昨日、朝日新聞がはじめて赤字に転落したニュースが出たように。どこかで「歪んで」いたものが、音を立てて軋んでいくように、少しずつ少しずつもう修正の効かない所にまで侵食していたのだろう。
そして、集英社の出した結論は「休刊」という答えだった。
「ROADSHOW」だけではない。「月刊少年ジャンプ」をはじめとして「PLAY BOY日本版」もそうだし、他の雑誌社も今年多くの休刊を発表した。しかも何十年も続いてきた雑誌をだ。本当に読者にとっては残念以外何もない。
時代は流れていく。そのうねりの中で残念ながらこれ以上抗う役目は終えたのだと、思う。
・・・出版業界も間違いなく「岐路」にたっているのだろう。
さて、暗い話題はこのくらいにしておこう。
最終号を読んでいて、当時の記憶や懐かしさ、現在における映画の情報がたくさん頭に思い浮かんでくる。創刊当時は表紙が女優ばかりだったのに、次第に俳優も増え、いつしかバランスよい配分になっていったり、遂にはジャニーズが表紙を飾ったり(賛否両論あったそうだが)。日本で人気の女優って間違いなく「タイプ」があるよな、とか、俳優じゃジャッキー・チェンのV7やジョニー・デップのV5+1(このまま続いていればジャッキーを超えたかもしれませんね)というように継続した人気の傾向にあるのだな、というのも人気投票ではよく見えてくる。こうしたものは「積み重ねた歴史」がなければ成り立たないものである。
ジャッキー・チェンのインタビューや特に感銘を受けたのは淀川長治の名語録、そして、これからの未来に向かっていく記事や今後公開される映画など沢山の話題が載っている。
とても、一日では読みきれない程の情報量。
そして、読むたびに留まって自分の見た映画に想いを馳せたり、当時を思い返したりする時間が多い事に気づく。そう、雑誌という限りあるページの枠に捉えきれない「想い」がこの最終号には詰まっている事に読んでいる人たちは気づくだろう。とても素敵な、そして残念な最終号である。
是非、一人でも多くの人に読んでもらいたい。「最後の贈り物」を頂いた気持ちにきっとなることだろう。そしてできれば、この最終号は自宅の本棚に残しておいてもらいたい。
継続は財産であった。
今回のROADSHOW最終号を読んで本当に思う。全てがここまで培ってきた「時」も「記事」も「想い」も。新聞記事でも記載されていたが創刊以来ずっと買い続けていた方もいっしゃったようだ。主催していた淀川長治賞もこれで終わりを迎えるとの事。
休刊がたくさんの事象や人に影響してしまう事は仕方がないことだとしても。
継続を停めてしまう事の無念を知っていても。
それでも、決断が下った今、未来に向かってそれらの財産をより違った形で生かして欲しい、というのは”願い”でもある。
雑誌「ROADSHOW」はこれで最終号となった。
しかし、最後というものは「区切り」であり本当の「終わり」ではない。
始まりでもある。
また、形を変えて「ROADSHOW」という名前はWEBを通じて残っていくようだ。
終わりは始まりだ。
そして、とても難しいと分かっていてもいつの日か「再集合」が来る日を待ち望んでいよう。
万感の思いを込めて。
お疲れ様でした、と言いたい。それは沢山関ってきたスタッフさん達に対しても、である。雑誌は、クリエイティヴなものは決して一人では創れない事を知っているからこそ。だからこそ大変な作業であったと想像できることも。
万感の想いを込めて。
そして、これからの素晴らしい道のりが待っていることを。
そんな想いの詰まった最終号を是非、手にとって読んでもらいたい。
きっと、映画を見終わった後の余韻に浸れるように、
読んだ人にも残るものがあるはずだから。
最後に、この文章はROADSHOW編集長であり、私にとって大切な友人でもある藤井 眞也氏に勝手ながら贈りたい。
本当にお疲れ様でした。
2008.11.22   ~The X-files:I want to believeを真夜中に見た日の夜に


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