気のいい兄ちゃん

2000年。
ちょうど冬に差し掛かった日差しのとてもやわらかいある休日の昼下がり-。まさに小春日和。場所は梅田タワーレコード、いや正確には、マルビル1F広場。
たまたま店内でCDを見ていた時に、これから1時間後にインストアライヴを行いますので、是非観に来てください、というアナウンスがあった。もちろん物色しているぐらいなので、暇だし見ることにした。
日差しはあったが、風が少し冷たい野外。しかも休日のオフィス街なので、閑散としている(大抵この辺はみんな地下で移動している)出てきたのは、一人のちょっとむさ苦しい(失礼)男性。サポートのギターもいた。その男性はかるくギターを弾き始めた。
リハーサルであった。何曲かして本番も良かったら見てください、と控えめで結構礼儀正しそうな素振りだった。その様子をを見て、本番も見ようかな、とその場に残った(単に暇だったからかも)。
ライヴ・楽曲自体は非常にオーソドックスなんだけど、なんだか温かみのあり、決して上手いとは言えなかったがなんだかこういう人は地道でも頑張って欲しいな、って思った。
「この曲はインディーズなんですけど、志村けんさんの番組(忘れました)深夜番組でエンディングとかあと大阪の放送局でも応援してもらって・・」
「今、色んな所を廻ってインストアしています。」
「実は、今日カセット作ってきました。このカセット、昨日大阪に来て、ホテルの室内で録音したカセットなんですよ。なんか恥ずかしいんですけど、よかったら、今日CD買ってくれた人に差し上げようと思って作りました・・・・」
などとMCをしていたような気がする(多分間違ってない、が細かいニュアンスは忘れました)
前述のような気持ちになった事もあり、CDをその場で購入した。で、本人からサイン付きのカセットを頂く(ついでにもう1本サインなしのカセットももらった気がする)。ちょろ、っと喋ったりもしたが、とても気のいい兄ちゃんであった事を覚えている。終った後でも、ファンの子?と軽く話していた素振りなどとても好感を持ったのを覚えている。


・・・時は流れ、2002年。大阪から東京へ引越しをする時、棚からそのCDとサイン入りのカセットテープ、それとその時のフライヤーが出てきた。「あぁ、そうそう、彼どうしたのかな、最近聞かないな。一生懸命やってたようなのになぁ
・・・」
・・・やがて、それすら忘れてしまっていた2003年春、ふと見た、ヤフーのニュースで彼の名を見ることになる。
河口恭吾「桜」に問い合わせ殺到!
それを見て凄く嬉しかった。
「おぉ、まだちゃんと頑張っていたんだ。うーん、ちょっと滋賀ってどうなんだろうなぁ。でも、こうやって話題になるぐらいになってよかったなぁ。」とまぁ、それぐらいにしか思わなかったのだが、とにかく個人的にすごく嬉しかったのを覚えている。
そして、早速購入。アルバムは今回買わずに500円シングルの方を。安い。しかも確かにこの曲は時の流れを感じさせないようなこれからずっと歌い続
けていかれるような雰囲気も確かに持っているなぁ。そしてあの時のあの景色が蘇った。とにかく、頑張ってほしいなぁ。・・・ちょうど、森山直太朗の「さくら」が売れていた頃でもあった。
そして、2003年10月。以前のレコード会社が撤退という事で、あの「桜」が新しいメーカーで「桜」を再発する。今回は前回届けられなかった人達へと
いう想いとプロモーションが行き渡るようにしたい、という気持ちもあっただろう。めざましTVなどでも、もう一つの「桜」という話題で出演など、これが本当に桜が開花するように広がった。現在では出荷40万枚を越えるヒットとなり、チャート上位をキープ、歌番組の出演も殺到している。桜満開Ver.
の限定シングルまで出る始末(爆)
・・・自分の中でこのパターンは平井堅と同じだったりする。彼のデビュー曲は「王様のレストラン」のエンディングに使用されていた事もあり非常に
いいアーティストがでてきたな、という感想も持ち、アルバムも買った。しかし、彼もご存知のように「楽園」まで数年を待たねばならなかった・・・
こうして、なかなかヒットに恵まれなくても、何かのきっかけで生まれる事がある。継続って大事だな、と本当に思う。そして、一番大事なのは
「想い」続けて行動していく事。あきらめずにいることなんだろう。考えてみれば、直太朗君だってそうなんだよね。続けていれば、いつかきっと
・・・・という想いが叶ってよかったな、と本当に思う。あの場所で何かを感じたからこそ、CDを買ったんだろう(きっと)。
次のシングル「愛の歌」が5月に発売予定との事。期待もあるだろうし非常に大変だと思うけど、でもタイトルからして自分らしく「在る」と思うし、
河口恭吾がこれからも歌っていく為の楽曲なんじゃないか、と感じます。
とにかく自分らしく歌を歌っていってほしい本当にそう思います。ほんとに彼のようなアーティストには頑張ってほしいと心から願います。
もちろん他人事といえば、それまでだよね。
だけど、時を経て、再び君の曲が聴けた事が、本当に嬉しい。そしてそれがこんなに多くの人達に受け入れられた事も。
・・・それでも、私には河口恭吾君を見るたび、梅田タワーレコードで頑張ってギターを弾いて唄っていたあの「気のいい兄ちゃん」を思い出してしまう。
あの時の記憶を忘れていない(蘇る)のも不思議なものだが、考えてみるとそうして風景が蘇るのって多分音楽の持つマジック(力)なんじゃないかとふと思う。音楽って本当に不思議なものだよ。そして素晴らしいものだと思う。改めて、そう想うし、そう感じる。
もちろんあの時に買った「真冬の月」とカセットは「桜」とアルバムと共に今も家の棚に並んでます。
そして、「桜」はこれから毎年この季節になるとずっと聞かれる「唄」になるんだろう。
本当におめでとう。


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