ハイスタ発売に際し改めてCDショップに想いを馳せてみる

突然もたらされたHi-STANDARD16年ぶりのニューシングル「ANOTHER STARTING LINE」の発売。

告知も一切なく、発売日にはCDショップでしか買えないというのは、
先にSNSで拡散され、ニュースとなり、ようやく公式的にも発表されました。

http://hs.pizzaofdeath.com/

取り扱いは約2500店舗。
10月26日以降通販とダウンロードを解禁します、という通常とは逆の流れ。

こんな展開は今の時代に逆行したパンクのようであるけれど今だからこそ新鮮な企画だとも思います。
アメリカでも予告なく配信リリースはあっても、現在CDショップが壊滅的な状況においてこんな事はできません。よくやってくれたなぁという想いはとてもあります。
発売するPIZZA OF DEATH RECORDSの柔軟性もあるかと思いますし、
流通もいつも通りだとしたらあそこだし(まだ買ってないので確認してません)、何にしても横山健さん(が決めたかどうかわからないけど)素晴らしい仕事です。

今回は店舗側の情報統制もかなり徹底してみたいで現場の人達も当日まで知らなかった方が結構いたようです。すぐに情報を出せる今だからこそ、ここまでしないとダメなんでしょうが、これは実際大変な労力です。本当に大変なんですよ(経験上苦笑しかない、現場はさらに大変ですけどね。

それでもショップで働く人達も昨日今日の事は忘れないんじゃないかとすら思います。
情報が爆発的に広がっていく熱量はいい意味でCDショップとメンバーそしてお客さんでつくる
音楽フェスのようなお祭り感すらありますね。

何といっても伝説的なバンドの16年ぶりの発売。
ニュースにならない訳がないのだから。

昨日渋谷と横浜のお店を何軒か見てきましたが、当然ながら大々的に展開していたし、
それを求めてお客さんが試聴や購入に来て列をなしている状況は本当に嬉しい限りでした
(まぁ入荷日なんでそれ以外の方もいたでしょうが…)

12月7日にはカバーシングルとツアーの発表とHi-STANDARD周辺も賑やかに
なってきました。さらに盛り上がる事必至ですね。

 

ところで、もう一度お店に足を運んでみる機会をという意味の施策で思い出すのが
今年4月にデビューした欅坂46の「サイレントマジョリティー」の展開です。
各メンバーの直筆サインとコメントの入った巨大メッセージボードを全国265店に掲示したものです。

http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/keyakizaka46/shoplist/160406/

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その後に5月にリリースされた乃木坂の2ndアルバム「それぞれの階段」でもポスターですが同様の施策が行われました。こちらは計438店舗という規模になっています。

http://www.nogizaka46.com/news/2016/05/post-12435.php

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さらに8月に発売した欅坂46の2ndシングル「世界には愛しかない」でもメンバー直筆サインとコメントの入ったポスターを掲示していました。

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こちらは公式から発表はありませんが、現状私の方で275店舗確認しており、おそらく300店前後だと思われますが、メンバーの原田葵と長濱ねるがそれぞれ20枚ずつ書いたとブログにはあるので、最大420店あるのではないかという推測にはなります。(これは1ヶ月経ってしまいましたがそのうち更新します)

原田葵 公式ブログ
http://www.keyakizaka46.com/mob/news/diarKijiShw.php?site=k46o&ima=0000&id=4289&cd=member

長濱ねる 公式ブログ
http://www.keyakizaka46.com/mob/news/diarKijiShw.php?site=k46o&ima=0000&id=4276&cd=member

11月30日に発売される3rdシングルでも同様の施策があるのか・・・この辺は是非継続してもらいたいと心から思ってます。

上記リストを見てもらえばわかるのですが、その対象はほぼチェーン店が多く、おそらくイニシャル(初回発注数)等を加味して配布されたのではないかという推測は感じます。

購入には繋がらなかったかもしれませんがCDショップにファンが足を運ぶ機会には
なったのではないかという意味ではとてもいい事だと注目しておりました。

それでも正直な話、掲示期間は乃木坂アルバム→欅2nd→欅1stの順で
かなり短期間なものでした。パネルは外しにくいけどポスターは展開しやすく外すのも簡単なので、乃木坂は本当に総じて短ったです。(未だに掲示しているお店は勿論あります)

極端な例でいえば、「サイレントマジョリティー」の際イニシャルが数日で売れたのに
バックオーダーをかけずに掲示をやめた店舗もありました。(すでに閉店してます)、でもそれが今のCDショップの在庫問題にも繋がるのかもしれません。

さらに上記のリストを見ると、圧倒的に関東地方の割合が大きいという事です。
とにかく地方にCDを置いているお店の数が減ってしまっているという現状に気づきます。
きっと普通にチェーン店含めたら500~600店ぐらいなんじゃないかと思います

例えば最近のTSUTAYAはレンタルCDよりもレンタルコミックの方に力をいれてます。
またこれは問題だと思うのですが、レンタル落ちのCDを堂々と中古で販売しており、
これが店舗スペースの”主”になってしまっているお店も増えてきました(どの店とは言いません)
その為新譜CD販売のスペースはどんどん減り、取り扱いをほぼ止めたお店もあります。
それは回転率や在庫の問題もあるのでしょうが何とも寂しい話でしかありません。
そもそもレンタル店ですら減少傾向なのですしね。

参考:日本レコード協会 CDレンタル調査 2015年
http://www.riaj.or.jp/f/report/rental/2015.html

HMVやTOWERといったチェーン店でも在庫の問題は避けて通れません。
チェーン店ですらそうなのだから街のCDショップは本当に大変な状況だと感じます。
地方に行って感じるのは地元のお客さんに合わせた例えば演歌や歌謡曲など地道に売れるものが優先されている事。+ジャニーズや子供向けの商品など、来てくれるお客さんが高齢化している事やニーズにあったものをより特化しないと生き残って行けない必然の流れだと感じます。

そうそう、9月に静岡に用事があったので、磐田・掛川・藤枝・静岡・沼津比較的大きな都市にぐるっとお店をみに行ったのですが、本当にお店が「点」なんですよね。絶対数が少なくなってしまっている。地方は車を持っている人が多いので郊外にあるショッピングモールやレンタルなどの複合店で購入しているんだろうなというのがよくわかりますが、正直CDショップを”目指して”行くのが大変でした。

CDショップに足を運んで貰いたいという思いは私にもあります。
日本では未だにお客さんに一番近い入口ですし、実店舗のよさはやはりありますから。

ショップ側も専業は本当に大変な時代です。その為今まで以上に店舗の統廃合を重ねて大規模店舗化やレンタルや書籍の複合展開に移行しています。HMVは限定盤などを積極的に企画したり、タワーレコードでは洋服やヘッドホンの販売スペースを増やしているのも目につきますし、TSUTAYAではスマホTONEの販売スペースを設置したり、新星堂もモザイクモール港北東急と大阪の四條畷、先日リニューアルオープンした阿佐ヶ谷店ではカフェを併設して雑貨等と共にCDを売るというお店もあります(新星堂であって新星堂ではないのもミソなのですが、これはまた別に機会に)。

どのお店もCDを買いに訪れるというよりも「音楽のある生活や空間」を優先して楽しんでもらう。
その延長線上でCDを購入してもらうという視点になっています。実際それでCDの売上が増えたという話も先日お聞きました。

形を変化させつつも音楽を売っていく時代です。

ハイスタの告知なしのシングル発売に関しては、本当によくやってくれたなと嬉しい反面、
もう少し早ければなぁとも感じます…早くても何も変わらないのかもしれませんが。
今回の取扱い店舗は2500店とはいえ、普段新譜CDを置いてるの?というお店も並んでます。
だからこそ全国を網羅したMAXに近い取扱店舗数だと思います。
それ程お店が本当に少なくなってしまったということです。

それでも、だからこそ、凄く意味のある企画だと考えます。
CDの売上やショップ自体が減っているという客観的な事実があるにしても、
どうやったら取り扱って貰えるのだろうか、まだまだCDショップにもできる事があるんだよ、
インストアだけじゃなく楽しんでもらえる事があるはずなんだ、と一石を投じた事。

事務所やレコード会社と一緒になって改めて考えてみるいい機会になって欲しいと
本当に、切実に願ってやみません。
是非、CDショップにふらっとでもいいから足を運んでみてください。
そこから広がる事発見する事、まだまだあると思いますから。